私は新規のお客様から新築やリフォームのお話を頂いたら、まずはとりあえず希望や予算を聞くのですが、初回若しくは2回目のお話で仕事を受けるかどうかを判断します。受けないと判断すれば、その後のプラン作りや見積は一切しません。今回はその理由と、自分がお客様の立場だったらどのように住宅会社に依頼して素敵な家を建ててもらうか、というあたりを書いてみたいと思います。
建築営業は本当に無駄が多く感じます。お客様と出会ってから契約までの時間が相当長いのです。それは当然のことですが、どんな家を建てたいのか相談を受け、該当する敷地を調査して境界線の確認や敷地の計測、高低差の確認、水道や電気の引き込み状況の確認をします。その際に役場に行って法令上の建築制限を確認します。
お客様の希望するプランを、法令上の建築制限に抵触しないか確認しながら作成していきます。そしてお客様に驚いてもらえるような、綺麗なCGグラフィックを時間をかけて作り込みます。出来上がったらそのCGグラフィックと間取り図を持ってお客様にプレゼン(提案)します。
一度のプレゼンでお客様に納得してもらえるようなことはまずないので、間取りやデザインの修正を繰り返し、その都度CGグラフィックも作り直します。何度か繰り返し、お客様の希望に近づいたら今度は見積の作成に入ります。
お客様の厳しい予算内に何とか収まるように使用材料の検討や必要数量の計算をしながら徐々に見積が出来上がってきます。ここまで来てようやくプランと見積を持ってお客様にクロージング(契約するための返事を頂く)をかけます。
ここまで相当な時間がかかってしまいますよね。同時に住宅ローンの相談や銀行との仲介に入ったりする場合もあります。資金計画のアドバイスも含め、契約するまでのプレゼンは全て無料ですることが建築業界の常識です。ところがお客様はこの間に、別の会社にも同じ話を持ちかけているのです。
しかも一社だけでなくニ、三社と相談されているケースが多く、大きな買い物なのでどこの会社に依頼するのが良いか真剣になられているわけですね。そうなると、最終的に決まるのは一社、選んでもらえなかったその他の会社はこれまで相当な時間と手間をかけて作り上げたプレゼンが、一円にもならずに終わってしまうのです。
長ければ一ヶ月くらいかけて取り組むので、それで決まらなければ貴重な時間が水の泡です。殆どのお客様は、これだけ動いてもらったからいくらかお支払します、なんてことは一切ありません。それどころかキツい指摘を受けるか、若しくは何の連絡ももらえない場合だってあります。
契約金額が大きな分、決まれば大きいですが決まらなければ大きなリスクということですね。最近は他社との相見積を意識して金額を目一杯抑え込むため、契約に至っても利益が出なかったり、下手するとお客様からクレームの嵐を受けて赤字になる場合もあります。
何とか契約までこぎつけて、それから長い工事期間を経て完成したのに、クレームばかりで赤字になったらもう踏んたり蹴ったりですよね(汗)それなら契約しなかった他の会社のほうが良かったことになります。業者側の立場からすると、建築営業は全て効率の問題、無駄な仕事は最初の段階で見切りを付けるべき!なのです。
お客様が素敵な家づくりに出会うためには
お客様は意識されない建築業界内部のお話でしたが、私がもしお客様の立場なら、やはり数社のプラン、見積は取りたいので、それを最初から業者に伝えます。その際に、「決まらなかった場合には気持ちだけお礼します」と伝えます。
例えば、五社に工事の依頼を持ちかけて相談にのってもらい、そこから良いなと思う会社を三社に絞ってスタートを切らすのも方法です。
一社だけに特命注文すると絶対に割高な見積がやってくるので、相見積は必ず取ることです。業者が身内でない限り、友達や知り合いだからといってその一社だけに依頼することは絶対にやめましょう。数社の見積を取ることで金額に差は必ず出てきます。
断ることになった会社には10万円程度、若しくは適当と思われる額のお礼をして、決めた会社からはいくらか最終値引きしてもらうようにします。「御社に依頼しようと思っているのですが、最終何とか○○万円安く出来ませんか?」とお願いすればほとんどの会社が応じてくれると思います。
そうすることで相見積に参加している全ての会社が一生懸命になってくれるので、素晴らしいプランを手にする確率が上がることは間違いありません。
業者側からは「決まらなかったら10万円払ってくださいね」なんて言えないですから、最初の段階で話を進めるべきかどうか見極めないといけませんが、もしお客様が上記の対応をしてもらえるなら、私も含め、業者は喜んで精一杯頑張ろうと思ってしまいます。
どんな営業方法も間違いではない
これはちょっと余談になるのですが・・・普段、得意先のお客様を回っていると、いつも何人かのお客様に、家に上がるように言われてお茶やコーヒーをいただいて談話をするのですが、先日も突然お邪魔したにも関わらず、快く家の中に入らせてもらい、しばらく世間話で盛り上がっていました。
最近の景気が良くないという話から、どうやって仕事を取っていくかという話になって、営業のコツや心構えといった話に移り変わっていきました。
私はどちらかというと、商談しても断られたり否定的な印象を受けたりしたら、すぐ諦めて次にいこうとするのですが、普通の営業マンだったら「そこを何とかお願いします!」とか、「一生懸命しますのでご決断ください!」といった言葉で成約に結び付けようとしますよね。
営業マンはノルマがあったりするので、1つでも成約を増やしたいと頑張るわけです。お茶を頂きながらそのような話をお客様としていたのですが、そのお客様が言うのは、「営業は諦めてはいけない」と言うのです。
私は自分で会社をやっているので、ノルマのためではないですが、営業はもっと力強く自信をもって、相手のお客様に誠心誠意で対応し、納得してもらうまで諦めてはいけない、それが相見積で比較されようとも、誰にも負けない熱意を持ってお客様に頼み込めば契約はしてもらえると言うのです。
確かにそのお客様の言う通りかもしれない、と私も思いました。すぐに諦めるのは努力してないだけ、とも言えますよね。そんな風に営業って本当に難しいなと思っていたのですが、数日後、建て替えの相談をしたいと一本の電話がありました。
お世話になっているお客様からの紹介だったのですが、私はいつも、なぜ私の会社に頼んで来たのか、理由を聞くようにしています。今回その理由を紹介してくれたお客様に聞いてみると「強引な営業やしつこい接客を全くしないから紹介した」・・・ということだそうです。
その建て替えを検討されているお客様は、ハウスメーカーや工務店に頼むと果てしない営業トークを浴びせられることを恐れていたようで、住宅会社選びに不安を抱いていたそうです。
お客様によって性質が違うのは当然のことですが、どんな営業スタイルがベストなのかってわかりませんよね。やっぱり私は自分のスタイルを無理に変えることなく、良いところを伸ばせていけたら良いのかなと思いました。まだまだ勉強しなければ・・・(汗